87話

バスティアンの視点

カフェを出てわずか数歩も歩かないうちに、私は気が変わって引き返した。一晩中、セレーネを怒らせないようにこの喧嘩を乗り切ろうとして慎重に立ち回ってきたが、もう我慢できない。

私は伴侶に恐れられたくない。彼女のPTSDの発作を引き起こしたくはないが、怒る権利はある。それに、喧嘩は不快なものだ。相手の気分を害することを恐れて自分の感情を表現できないなら、正直に喧嘩することなどできない。

ドアが勢いよく開き、上に吊るされた鈴が激しく鳴ると、セレーネは飛び上がった。私は私たちのブースに戻り、耳から湯気を立てながら美しい伴侶の前に立ちはだかる。「どれくらい?」

「何が?」セレー...

ログインして続きを読む