9話

セレーネの視点

「違うわ」と私は主張する。私は空中で揺れ動き、ドアがどんどん近づいてくる。突然、バスティアンが私を浴室から連れ出そうとしていることに気づく。「ダメ、ここにいて!」と私は叫ぶ。

バスティアンの手のひらが私の額と頬に押し当てられる。「熱があるじゃないか」まるで私のせいだと言わんばかりの口調だ。「そして具合が悪くて浴室から出られないほどなら、救急室に行く必要がある」

胸に恐怖が広がる。病院には行けない。医者にも会えない。妊娠していることがバレてしまう。彼に伝えられてしまう。「ダメ」と私は大きな声で反対する。「大丈夫よ」

「大丈夫じゃない」と彼は警告するような口調で訂正する。「...

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