91話

セレーンの視点

アスフォデルを離れるのは、想像以上に辛い。エリュシオンを離れてからずっと故郷が恋しかったけれど、ここにはたくさんの大切な思い出がある。リラが初めて歩き、初めて言葉を話したのはここだった。彼女の幼い人生がここで始まったのだ。

バスティアンは私の悲しみを感じ取っているようで、朝からずっと、解決方法がわからない問題に直面した時の男性特有の落ち着きのない様子で私の周りをうろついている。引っ越しについて強く主張したことに罪悪感を感じているようだけど、それを遅らせるほどの罪悪感ではないようだ。まあ、この苦痛を長引かせても事態は悪化するだけだろうけど。

リラは実は誰よりもこの状況に上手...

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