チャプター 177

アレクサンダー視点

目の前には極北の荒野がどこまでも広がっていた。俺たちを丸ごと飲み込もうとするかのような、白銀の地獄だ。

膝まで積もった雪をかき分けながら進む俺とフレイヤの吐く息は、白く目に見えるほどだった。凍死せずにいられるのは、ひとえに人狼としての頑強な肉体のおかげだ。

『満月まで、あと八日』。分厚い手袋越しに腕時計を確認しながら、俺は思った。『ルークにはもう時間がない』

隣で重い足取りで進むフレイヤに目をやる。彼女から漂う疲労臭とは裏腹に、その顔には険しい決意が浮かんでいた。数歩進むごとに、彼女は胸に手を当てていた。この荒れ地に足を踏み入れてから、そこでは奇妙な銀色の光がますま...

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