チャプター 36

ルーク視点

スポーツカーのエンジン音が、山の空気を切り裂くように響いた。キャンピングカーの近くでリリィとリヴァイと遊んでいた僕は、すぐにぴくりと反応する。仔狼の感覚が、嗅ぎ慣れた匂いを捉えたんだ。

『うそだろ……』

流線形の黒い車が停まり、降りてきた人物を見て心臓が止まるかと思った。最初にアレクサンダーが、次に助手席のドアが開いて――そこにいたのは、ママだった。

今すぐにでも駆け寄りたかった。でも、アレクサンダーの隣に立つ彼女の様子が、どこか危険を叫んでいるようだった。

「マ――」リヴァイが呼びかけ、その顔がぱっと輝く。

僕は電光石火の速さでリヴァイの口を手で塞いだ。彼の目は混乱で...

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