第九十七章

フレイヤ視点

転んだ拍子に、尖った破片が腕を切り裂き、白い肌に一筋の紅い線を描いた。

だが血が滲むそばから、私の内に宿る狼の治癒能力が働き出すのが感じられた――傷はすでに塞がり始め、出血も勢いを失って止まっていく。

『ほんと、見せつけたがりなんだから』と内心で毒づいたが、表情は平静を保った。

ダンスホール全体が、水を打ったように静まり返る。すべての狼たちの視線が、私たちに集中した。

オリヴィアのパニックの匂いが、他のすべてを突き抜けて鼻につく。恐怖と羞恥が波のように彼女から発せられ、あまりの強さにおかしくなりそうだった。

『これが戦士階級の狼? 本気? この程度なの?』

「ち、違...

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