チャプター 9

エルサ

腰に添えられた彼の手から、わずかな圧力を感じる。私の理性と同じように、彼の自制心も崩れかけているのがわかった。

効いてる。もっと押さなきゃ。本部に帰るために。

見上げると、彼の瞳は暗く沈み、瞳孔が開いていた。その周りを狼特有の金色が縁取っている。飢え? 渇望? 複雑な感情が彼の表情をよぎった。ほんの一瞬、世界には私たち二人しかいないような気がした。

ヴェラが不快感を露わにした鋭い声で彼の名を呼んだ瞬間、その時間は粉々に砕け散った。「ドレイク? 大丈夫なの?」

私は彼からパッと身を離した。足に痛みが走ったが無視して、こわばった声で言う。「ありがとうございます、ストーンさん」うつ...

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