チャプター 64

エレナ視点

彼は私をじっと見つめていた。その瞳には金色がちらついている――彼の内なる狼が、表面に現れかけている危険な兆候だ。

「どけ」

彼の声は荒々しく、命令的だった。

私はその口調に驚いて顔を上げた。「なんですって?」

「邪魔だ」彼は唸り、私が座っているソファに向かって歩み寄ってきた。「場所を空けろ。今すぐだ」

声に含まれた命令の響きは、紛れもないものだった。私はとっさに横にずれ、安全な距離を保ちつつ、無意識に彼のためのスペースを作った。

リチャードはソファにどさりと身を沈め、目を閉じて頭を後ろにもたせかけた。コントロールを取り戻そうと、彼は顎を食いしばる。そのせいで首筋には血...

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