チャプター 91

リチャード視点

ドアを蹴破らんばかりの勢いで警察署に飛び込むと、即座に波紋が広がった。署員たちが顔を上げたが、俺の姿を認めるとすぐに目をそらした。俺が何者か、彼らは知っていた。ロビーを我が物顔で進んでいくと、恐怖の匂いが空気に満ち、内なる狼が今にも牙を剥かんばかりに昂っていた。

「彼女はどこだ?」俺の声が、突如訪れた静寂を切り裂いた。

若い署員がおずおずと近づいてきた。「ブラックウッドさん、まずは落ち着いて――」

「言ったはずだ。『彼女はどこだ』と」俺の声は、危険な唸り声へと変わった。

署員は青ざめた。「しょ、署長をお呼びします」

部屋を見渡すと、研ぎ澄まされた感覚がエレナの匂いを...

ログインして続きを読む