第10章 策略

江口雲上はネクタイを引っ張りながら、自分を責めた。彼女と話すべきではなかった。

理不尽な女だ。

車内の沈黙が気になって話しかけてしまった自分が理解できず、考えれば考えるほど後悔が募った。

家に着くまで、二人は一言も交わさなかった。

車が玄関に停まるや否や、江口雲上は素早く降りた。水原葵は何の影響も受けていないかのように、のんびりと降りて家に入っていった。江口雲上がリビングのソファで水を飲んでいると、水原葵は彼を見向きもせず、ゆっくりと階段を上がっていった。

江口雲上は乱暴にコップをテーブルに置いた。

水原葵はその音を聞いても、まったく気にする様子もなく、そのまま階段を上がり続けた...

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