第11章 効率的

水原葵は記憶力が抜群で、ほぼ一目で覚えられるほどだった。文書の内容を頭に入れてから入力を始めた。作業は面倒ではあったが、彼女にとって難しいものではなく、すぐに慣れて、どんどん速くなっていった。

水原葵のキーボードを打つ音が響き、すぐに他の社員の注目を集めた。彼らは小声で話し合っていた。

「あの子のタイピング速いわね。私でも及ばないわ」

「田舎者だと思ってたけど、意外と仕事できるじゃない」

「そうよね。午前中の仕事ぶり見た?効率すごく良かったわ。田舎出身とはいえ、ただの素人じゃないってことね。社長の婚約者になれたのも納得。あれ、確か江口会長の意向だったんでしょ?」

「それがどうした?...

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