第12章 闇が降りる

水原葵が帰り支度をしていると、中村玲奈から電話がかかってきた。

「あとどのくらいで終わる?」

「もう終わったわ」

「ちゃんと確認したの?問題ないの?」

この返事は中村玲奈の予想を超えていた。

水原葵は我慢強く答えた。

「確認済みよ。他に用がなければ切るわ。もう帰るから」

「だめ!まだ帰っちゃダメ!」中村玲奈の声が突然大きくなった。

歩き出した水原葵の足が止まる。

「どうして?」

「さっき田中部長から電話があってね、追加データを入れる必要があるの。今からそれを持って行くから、待っていて」

「直接データを送ってくれればいい。あなたが来るまで待ってたら遅くなるでしょ」

「そ...

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