第14章 怖がらないで、私がいる

「水原葵!」

江口雲上は彼女を抱き起こし、頬を軽く叩いた。

「どうしたんだ?」

水原葵は眉をしかめ、もごもごと呟いた。

「暗い...行かないで、置いていかないで...」

暗い?

もしかして、自分と同じように閉所恐怖症なのか?

江口雲上の心は一瞬で柔らかくなった。かつての少女を思い出した。暗闇の中で、彼の傍で震えていた、あの子のように。

江口雲上は胸に憐れみの情が湧き、優しく言った。

「大丈夫だ。家に帰ろう」

シンプルな「家に帰ろう」という言葉は、いつも人に力を与えるものだ。

水原葵は江口雲上の言葉を聞くと、徐々に体の力が抜けていった。まだ何かを呟いているが、江口雲上には...

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