第2章 田舎者

その夜、江口雲上はいつものように眠れないということはなく、むしろ安らかに眠りについた。

夢の中で、十年前の光景が蘇った。暗い部屋で、小さな少女が彼を抱きしめ、幼い声で言った。

「怖がらないで。私、すごく強いから、ちゃんと守ってあげる」

江口雲上は夢の中で彼女を見つけた気がした。まるで現実のように。

翌朝。

江口雲上の従妹、江口綾は早朝から従兄の部屋の前で待ち構えていた。これから起こる面白い出来事を期待していた。あの田舎者の女を困らせて、その生意気な態度を見返してやりたかった。

ドアに耳を当てて、部屋の中の様子を窺おうとしたが、かすかな足音しか聞こえず、期待していた怒鳴り声や言い争...

ログインして続きを読む