第25章 客室に引っ越す

「水原葵さん、秘書部に来て数日が経ちましたね。我が社とフランスレディファッションの次期シーズンのコラボ企画を担当してもらいます」中村玲奈は言いながら、目に一瞬だけ見えるか見えないかの憎しみが光った。

「これが企画の資料です。早めに目を通しておいてください」と数枚の書類を水原葵に渡した。

水原葵は資料を受け取り、さっと目を通して「はい」と答えた。

水原葵が自分の席に戻る背中を見つめながら、中村玲奈の目に宿る憎しみの色は濃くなっていった。

レディファッションとのコラボ企画は、ずっと彼女が担当してきたものだった。

なのに今朝、江口雲上に呼ばれ、この企画を水原葵に任せるよう言われたのだ。

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