第29章 杉山美咲の完敗

江口雲上の深い瞳と視線が交わり、水原葵は優しく微笑んだ。

「どういたしまして」

「葵ちゃん、早く座って食事をしましょう」ドリを取り戻して上機嫌の江口爺やが言った。

「黒田、葵ちゃんの箸と茶碗を持ってきなさい」

「はい」黒田が即座に指示を出した。

江口爺やは横にずれて、水原葵に江口雲上の隣の席を示した。

「江口おじいさん、そんなにご丁寧に」水原葵は江口雲上の隣に座りながら、穏やかに微笑んだ。

「葵ちゃん、本当にドリを見つけてくれてありがとう」江口爺やはドリを抱きしめたまま、感謝の眼差しで水原葵を見つめた。

もし水原葵がドリを見つけてくれなかったら、もう二度と会えなかったかもしれ...

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