第36章 何のさくらだ?!

さくら?

また始まった……

何のさくらだよ?!

水原葵はイライラしながら身をもがいた。

「江口雲上、もういい加減にして!離してよ、何のさくらよ、意味わかんないんだけど!」

水原葵の態度は、まるで江口雲上に冷水を浴びせたかのようだった。彼の熱い思いを一気に消し去ってしまう。

これはさくらではない。

さくらなら、こんな風に拒絶したりしない。

江口雲上は水原葵から手を離し、姿勢を正して背もたれに身を預けた。表情は再び普段の冷ややかさを取り戻していた。

彼はボタンを受け取り、薄い唇を僅かに開いた。

「俺のボタンが、なぜお前の手元に?」

水原葵は彼に掴まれ...

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