第45章 水原葵、死ね

江口雲上は認めたくなかった。知らず知らずのうちに、自分が水原葵に惹かれていることを。

水原葵の姿、声、笑顔、全ての表情が江口雲上の脳裏に浮かび、なかなか消えてくれなかった。

江口家の実家から戻ってきたのは既に退社時間を過ぎていた。江口雲上は家に電話をかけると、田中さんから水原葵はまだ帰宅していないと告げられた。

江口雲上は車を走らせ、江口グループへと向かった。

夜の闇が深まっていく。

オフィスの同僚たちは三々五々と帰っていったが、水原葵はまだ仕事に没頭していた。

いつの間にか、オフィスには彼女一人だけが残されていた。

水原葵はパソコンの画面を見つめ、真剣に報告書を...

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