第46章 江口雲上の負傷

この出来事はあまりにも突然だった。

誰も想像していなかった、中村玲奈がいきなりナイフを取り出すなんて。

冷たい光を放つ鋭いナイフが、真っ直ぐに水原葵に向かって突き出された。

水原葵は表情を引き締め、ちょうどナイフを蹴り飛ばそうとした瞬間、突然江口雲上が身を翻し、その大きな体で水原葵を守るように立ちはだかった。

「危ない、気をつけろ!」江口雲上の低く沈んだ声には、緊張と心配が混ざっていた。彼は片手で水原葵を抱き寄せ、もう一方の大きな手で中村玲奈のナイフを持つ腕を掴もうとした。

水原葵は江口雲上がこのタイミングで彼女を守ろうとするとは思いもよらなかった。

足を止める間も...

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