第5章 最もすごい人

水原葵が江口グループに入社する前から、彼女についての噂は社内で広まっていた。

「聞いた?江口社長の婚約者が江口グループに入社するんだって!しかも社長の秘書になるらしいよ」

「田舎者で醜いって聞いたけど。大学も出てないんじゃない?書類なんて読めるの?」

「パソコンすら見たことないでしょ!」

しかし、水原葵が江口雲上と共に会社に姿を現した瞬間、そんな噂は一切止んだ。

田舎出身とは思えないほどの美貌と気品を備えた女性の存在に、都会派を自負する社員たちは自分の不甲斐なさを感じずにはいられなかった。

もちろん、その美しさは賞賛だけでなく、嫉妬や中傷も招くことになる。

人事部で手続きを済ま...

ログインして続きを読む