第50章 水原葵のこと、好きなの?

「ガシャン」という音がして、江口綾の手にあった保温ボトルが床に落ち、中の朝食が地面に散らばった。

水原葵には理解できなかった。いつ自分が江口綾を押したというのだろう?

明らかに江口綾が自分で転んだだけなのに。

「どうしたんだ?」物音を聞いて、江口雲上が書斎から出てきた。

江口雲上を見た途端、江口綾の顔色が青ざめ、悔しそうな涙がぱっと溢れ出した。

「兄さん、葵姉が私を押したの、すごく痛いよ!」

なるほど、水原葵を陥れるために、わざと江口雲上の前で芝居を打っていたというわけか。

水原葵は冷笑して言った。

「私があなたを押したって?」

江口綾は潤んだ瞳で江口雲...

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