第57章 お前は私の婚約者だ

「私の服は……」水原葵は言いかけて止まった。誰が服を着替えさせてくれたのか聞きたかったが、そんな質問は口にするのがあまりにも恥ずかしかった。

江口雲上は一瞬困ったような表情を浮かべ、軽く咳払いをした。

「井上さんが着替えを手伝ってくれたんだ」

「ご迷惑をおかけしました」水原葵は安堵のため息をついた。井上さんは江口雲上が雇っている家政婦だった。

江口雲上の端正で冷たい顔立ちはオレンジ色の灯りの下で、どこか柔らかさを帯びていた。

「医者に診てもらったよ。少し低血糖だったみたいだ」

「そうですか……」水原葵は完全に恥をかいたと感じた。生理で倒れるなんて、いつからこんなに弱...

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