第59章 愛に比べれば、夢なんてどうでもいい

水原葵はベランダに歩み出て、江口雲上が後をついてきていないことを確認してから電話に出た。

「山田俊介、何?」

「葵、会いたい」山田俊介の声は、彼自身のように、どこか淡い憂いを帯びていた。

水原葵は少し考えてから承諾した。

「いいわ、明日の朝十時、青空カフェで」

彼女も山田俊介に伝えておきたいことがたくさんあった。

「明日ね」山田俊介の声は、少し明るさを取り戻していた。

水原葵が山田俊介との約束を受け入れたということは、まだチャンスがあるということだろうか?

翌日はちょうど週末だった。

朝早く、水原葵は家を出た。彼女は早めに到着する習慣があった。

だが...

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