第6章 林田楠に及ばない?

元々五時間を予定していた撮影は、林田楠の協力のおかげで二時間で終わってしまった。

中村玲奈はそれを不思議に思っていた。

実は、林田楠が服を嫌がっても、水原葵が「似合うわ」と一言言えば文句を言わなくなり、林田楠が難癖をつけても、水原葵の一瞥で黙り込んでしまう。林田楠はそれほど弱気なのだ。だって水原葵が怖いんだもん!中村玲奈はふと気づいた。この女性は会社では軽々しく関わるべきではない、社長の奥さんという立場以上の何かがあるのかもしれない。

撮影後、水原葵がいくら断っても、林田楠は水原葵との食事に固執した。

「葵姉が承知してくれないなら、江口グループの玄関で居座るからね」と宣言した。

本...

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