第9章 二人の拗ねた子供

水原葵が振り向くと、江口雲上が自分の方へ歩いてくるのが見えた。明らかに彼女の後を追ってきたのだ。

「江口社長、もう就業時間外です。私の行動は自由のはずですけど」

水原葵は江口雲上の理不尽な支配欲が可笑しくてたまらなかった。

その時、一台の車が二人の前に停車し、運転手が助手席から降りて、ドアを開けた。

水原葵は江口雲上の車だと気付いた。江口は視線を逸らしながら言った。

「一緒に帰ろう。何かあったとき、江口家に責任が及ぶのは避けたい」

水原葵は眉をひそめた。

「必要ありません。江口家の資産なんて、興味ないですから」

立ち去ろうとする水原葵の手首を江口雲上が掴んだ。「乗れ!」と強い...

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