ブラッドバスとディックキックス

サイラス

「どうしてセインに、あの戦いで見たことを全部話さなかったの?」

ファイアボールは軽く重心を左右の足に移しながら尋ねてくる。俺が気づいた癖だ。

ファイアボールには、俺を回し蹴りで地獄送りにしようとする前に、重心を移動させる癖がある。鋭い眼光の揺らぎに、彼女の超人的な反射神経が見て取れる。俺の動きを一つ残らず計算しているのだ。俺は自信に満ちた態度でどっしりと構える。獲物に飛びかかろうとする捕食者のように。

「お前に信用してほしいからさ。お前の秘密はばらさない。だが、セインはお前が思っている以上に理解があると思うぞ」

先に動いたのはファイアボールだった。彼女の体が残像のようにブレ...

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