自分が欠けていたなんて知らなかった自分の一部

アイラ

私を包むシューという音は、聞き慣れず、混乱を誘う。

「心拍数が上がっている。追加で一服投与する」

頭のすぐ近くで誰かが言った。身じろぎしようとするが、体は鉛のように重く、まるで目に見えない鎖で繋がれているかのようだ。手足が言うことを聞かない。全ての音が、水中にいるかのようにくぐもって聞こえる。

鼻を突く、消毒液のような鋭い匂い。そして手首には、金属の冷たい感触があった。チクリという痛みに、パニックが胸の内でかき混ぜられ、爪を立てるように這い上がってくる。だが、口は言葉を紡げない。

「意識が落ちた。飛行を続けろ」

『アラマ……』

瞼には鉛でも乗せられているかのようだ。無理やりこじ...

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