ダーシー

アイラ

もし「最高に気まずい瞬間」賞なんてものがあったら、セインのオフィスでの一件は間違いなく受賞していただろう。この二十四時間に起きたことを、どこからどう整理すればいいのか、さっぱり分からない。

あなたには運命の相手がいる。

きみが欲しい。

私たちは情熱的な夜を共にした。なのに今、あなたは他の誰かと去っていく。

私は混乱と罪悪感に苛まれている。特にキアンを見ると。彼は優しそうで、少年っぽさがある。彼の香りはシナモン。この香りについてどう感じるか、自分でもよく分からない。普段なら私にとって心地よい香りとは言えないけれど、運命に逆らうことなんてできるはずもない。オフィスでは親切だった。...

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