第10章

「義兄さん……」

秋山柔子は男性を見るや否や、涙がぱっと溢れ出し、その可憐で儚げな姿は誰が見ても彼女が耐え難い辛さを味わっているように思えた。

体を寄せようとしたが、藤原光弘は執事を手招きして彼女の接近を避けた。

そのまま上着を手渡した。

一挙手一投足に、後継者としての威厳と気品が漂っていた。

秋山棠花もまた視線を藤原光弘に向けた。

男の深く冷たい瞳が微かに上がり、その目の奥には凍てつくような冷気が広がっていた。まるで厚い霜に覆われたかのように、人を思わず震え上がらせる。

大広間は一瞬にして静まり返った。

全員が藤原光弘が秋山棠花にどう対応するかを見守っていた。

唯一、当の...

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