第21章 古臭い人

安田美香の視線が個室を掃うと、中にはまだ数人の人物がいることに気づいた。皆、安市の名の知れた顔ぶれだった。彼らは囲んで座り、小声で話し合っていた。

安田美香の出現により、個室の空気は一瞬で凍りついた。

全員が会話を止め、一斉に彼女へ視線を向けた。

安田美香はゆっくりと藤原時の前まで歩み寄り、手に持っていたベルベットの箱をテーブルの上に置いた。

「叔父さん、これは前に私にくださった不動産登記証明書です。お返しします」

藤原時はようやく顔を上げて彼女を見た。その眼差しは深く鋭く、まるですべてを見通すかのようだった。

「ここに来たのは、それを返すためか?」彼の声は冷たく、何の感情も読み...

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