第35章 一線を越えた

藤原時は頭を上げ、淡々とケーキに視線を走らせたが、何も言わなかった。

「もう、なんでそんな冷たいのよ?」白川寒は不満げに唇を尖らせた。「これは安田美香が直接、まあ、鈴木悦子に頼んだものだけど、でも彼女の気持ちなんだからね!」

藤原時は相変わらず黙ったまま、ただ書類に目を落とし続けた。

「もういいよ、話しかけるだけ無駄だわ。ケーキ食べに行くから!」白川寒は空気を読み、ケーキを手に部屋を後にした。

「バン!」

オフィスのドアが乱暴に閉められ、藤原時の手にあったペンは「パキッ」という音と共に二つに折れた。

彼はイライラしながらペンをゴミ箱に投げ捨て、立ち上がって大きな窓の前に歩み寄った...

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