第8章 家に送って

病院の廊下で、南崎陽はすでに長い時間待っていた。安田美香を見ると、彼の目に一瞬、気づかれないほどの異様な光が宿った。

藤原時の特別秘書として、南崎陽は長年藤原時の側にいて、藤原時の性格を熟知していた。彼はこれまで藤原時がどの女性にもこれほど心を寄せる様子を見たことがなかった。二年前のあの人でさえも...

車に乗り込むと、藤原時が口を開いた。「退院したら、青水湾のマンションに引っ越せ」

安田美香は一瞬固まった。青水湾?一等地の富裕層エリアで、一室が数千万円もする高級マンション。

「叔父さん、そんな高価なものは受け取れません」安田美香は慌てて断り、とても恐縮した様子を見せた。

「藤原辰...

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