第10章

一年後、私は再び出産の痛みを経験した。

富士山人類館の特別医療室で、私は歯を食いしばり、額は汗でびっしょりになっていた。虫族の医療者の水晶触角が照明の下で煌めき、その冷たい爪が私の腹部を押さえつけ、胎児の位置を測っている。

「双子だ」

虫族医療者が、無機質な日本語で告げた。

「国宝級人類標本の繁殖計画は順調に進んでいる」

それが幸運なのか不運なのか、私には分からなかった。最初の赤ん坊が取り出された時、産声は上がらなかった。虫族医療者の触角が激しく震え、不吉な知らせを伝達しているようだった。二人目の子——女の子は、か細い産声を上げた。

「一体生存」

虫族医療者は静かに言っ...

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