第13章

私は富士山の野外エリアの入り口に立っている。手首には、虫族が言うところの『国宝級人類保護装置』――皮膚に埋め込まれた遺伝子追跡装置が装着されていた。それはまるで冷たい金属の蛇のように手首にきつく巻きつき、私の位置と生命兆候を絶えず監視している。

私は最初の一歩を踏み出し、千年の時を経たこの日本の土地に足を踏み入れた。

富士山はもはや私の記憶にある姿ではなかった。一年中咲き誇る桜が山を埋め尽くし、常軌を逸した季節に薄紅色の花びらが舞い落ちる。四季の境界はとうに曖昧になり、空気中には奇妙な生物発光による光害が満ち、空は不自然な青緑色を呈していた。かつて神聖とされた富士山は異様な生物混合...

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