第4章

医療個室の照明は展示室よりずっと柔らかく、壁の通気口からは淡い桜の香りが漂ってくる。これは、虫族が人間の感情を落ち着かせるために用いる手段だ。

私はベッドに横たわり、天井を見つめてぼんやりしていた。

足首の傷がじんわりと痛む。それは富士山が崩落した時に負った傷で、虫族はずっと治療を続けているが、完全に治すことを急いでいるようには見えなかった。

おそらく、彼らにとってこの傷は私の身体の「特色」の一部なのだろう。山田櫻子の黒いストレートのロングヘアや、藤原勇の強靭な体格と同じように、展示価値の一部として。

部屋の扉が滑るように開く音で、私の思考は中断された。横を向くと、入ってき...

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