第5章

富士山人類館の照明が落とされ、「夜間休息時間」の到来を告げた。

私が展示エリアに移されてから、これで三週間目になる。

医療個室の保護はとうに過去のものとなり、病気を装う策略も虫族に見破られてしまった。

奴らは私にガラスの展示ケースをあてがい、その傍らには「東京地区・純血種人類・雌」というラベルと、私の生物的特徴に関する詳細な説明文が貼り付けられている。

ふと、水晶の触角飾りをつけた医療者が、少し離れた場所に立っていることに気づいた。その触角を微かに震わせながら、私の脚の傷跡をじっと見つめている。その視線は不快だったが、私はもうポーカーフェイスを保つ術を心得ていた。

奴が...

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