第6章

かつて、私は大学のキャンパスに咲く桜の木の下で願いをかけた。運命の赤い糸が、聡明で優しい男性と私を結びつけてくれると信じていた。

あの頃の私は、未来への憧れで胸がいっぱいだった。

今となっては、その記憶さえも遠い前世の出来事のようだ。

今の私は、富士山人類館のガラスケースの中にいる。壁には私のデータと『純血種人類』というラベルが掛けられている。

私の抱いた幻想はすべて、あの桜のように、とうに散り果ててしまった。

丸石亮に、少しばかり好意を抱いていたことがある。彼はクラス委員長で、立ち居振る舞いは品があり、言葉遣いも優雅だった。

その想いを、一度も口にしたことはない。...

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