第4章
週末の朝。初夏のまぶしい陽射しが、集合場所にずらりと並んだ数台の車に降り注いでいた。
水原杏奈がバックパックを下ろした途端、石田かずみがまるで百メートル走のような勢いで西崎志宝の車へ駆け寄り、助手席のドアを乱暴に開けて乗り込むのが見えた。
石田は半開きの窓から顔を覗かせ、申し訳なさそうな表情を作りながらも、その瞳には隠しきれない勝利の光を宿している。
「ごめんね、杏奈。私、西崎先輩の車じゃないと酔っちゃう体質なの」
西崎が運転席から顔を出し、やや気まずそうに言った。
「水原は、葉川の車に乗ってくれ」
そう言って、彼は隣に停めてある黒いセダンを親指で指し示す。
「後部座...
ログインして続きを読む

チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章

5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章

8. 第8章

9. 第9章

10. 第10章

11. 第11章


縮小

拡大