第6章

葉川訪の運転するセダンの車内で、重い沈黙が二人を包み込んでいた。

「……知らない女の子は乗せない主義なんじゃなかったでしたっけ?」

不意に、杏奈が沈黙を破った。その声には、からかうような響きが混じっている。

「私たち、もう『知らない女』じゃ、ないですもんね?」

葉川の指が、とん、とん、と不規則にハンドルを叩いている。その視線はフロントガラスの向こうに固定されたままで、決して杏奈の方を見ようとはしない。

「……結局、俺のこと、利用してただけか」

やがて、彼がぽつりと呟いた。その声は低く、刃物のように鋭い。

「あんたの狙いは、最初からずっと西崎だったってことだろ」

その...

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