第6章
葉川訪の運転するセダンの車内で、重い沈黙が二人を包み込んでいた。
「……知らない女の子は乗せない主義なんじゃなかったでしたっけ?」
不意に、杏奈が沈黙を破った。その声には、からかうような響きが混じっている。
「私たち、もう『知らない女』じゃ、ないですもんね?」
葉川の指が、とん、とん、と不規則にハンドルを叩いている。その視線はフロントガラスの向こうに固定されたままで、決して杏奈の方を見ようとはしない。
「……結局、俺のこと、利用してただけか」
やがて、彼がぽつりと呟いた。その声は低く、刃物のように鋭い。
「あんたの狙いは、最初からずっと西崎だったってことだろ」
その...
ログインして続きを読む

チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章

5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章

8. 第8章

9. 第9章

10. 第10章

11. 第11章


縮小

拡大