第10章 最終対峙

月が隠れ、風が唸る深夜。廃工場の巨大な煙突が、夜空に佇む沈黙の巨獣のようにそびえ立っていた。

夏希はがらんとした作業場の中央に一人で立っていた。背後にはクロノスが念入りに用意した退路が確保されている。錆びついた機械設備が月光を浴びて不気味な影を落とし、まるで無数の瞳が、間もなく訪れるであろう嵐を窺っているかのようだ。

胸の魔法印が狂ったように脈打つ。彼が来たのだと、彼女にはわかった。

「出てきなさい、レオット」夏希の声が、だだっ広い作業場に響き渡る。

「ずっと私を探していたんでしょう、もう隠れるのはやめて」

暗闇から、ゆっくりと重々しい足音が聞こえてきた。

影の中から、長...

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