第3章 一緒にいた三年間

神殿最上階のプライベート書斎にて。

「精神を集中させ、光の流れを感じてください」

レオットが向かいに座り、穏やかな声で言った。

私は目を閉じ、彼の指導に従って上級の聖光術を放とうと試みる。

この異世界に降り立ってから、もう一年が経った。予言書はすっかり沈黙を守り、本当の救世主がいつ現れるのか、誰にも分からない。

一年もの間、朝夕を共に過ごすうち、レオットが私を見る眼差しが静かに変わりつつあるのを感じていた。

「ちょっと違い……伝統的な防御魔法は硬すぎるわ」

私は不意に目を開けた。現代人としての知識が強みを発揮する。

「元素シールドの原理を組み合わせられないかしら? 聖光の外層に、風元素の流動性を加えれば……」

言葉が終わるか終わらないかのうちに、私の手の中の聖光が眩い光を放った。

「危ない!」

レオットが瞬時に駆け寄り、制御を失った私を強く抱きしめた。

彼の胸の起伏と、微かなミントの香りがはっきりと感じられる。心臓の鼓動が激しく鳴っていた。

表面上の氷のような冷静さとはまるで違う。

「だ……大丈夫ですか?」

彼の声は震えていたが、すぐに私を離そうとはしなかった。

「ええ、平気よ」

私はわざと彼の腕の中にもう数秒留まり、この男性の温もりを味わった。

「さっきのアイディア、悪くなかったみたい。ただ、魔力制御がまだ精密じゃなかっただけ」

「あなたの魔法に対する理解は、確かに……独創的ですね」

レオットはようやく私を解放した。

「聖光術をそのように改良できるとは、考えたこともありませんでした」

「これくらい、基礎よ」

私は何でもないふりをして髪を整えたが、心の中は花火が打ち上がったように騒がしかった。

「現代魔法理論は、伝統的な方法よりずっと効率的なの」

現代魔法理論? レオットは一瞬、呆気に取られた。

当たり前じゃない、現代魔法理論よ!

何と言っても、私は二十一世紀から来た現代人なのだから!

こうして、書斎での学習の日々が続いていった。

春が過ぎ、秋が訪れる頃には、私の魔法の腕は飛躍的に上達していた。

レオットの方はと言えば、ほとんどの時間は相変わらずあの厳格な神官のままだったけれど、いくつかの些細な変化に私は鋭く気づいていた——例えば、私の好きなお茶の種類を覚えていてくれたり、私が怪我をすると眉をひそめたり。

二年目の春。

魔獣襲来の警報が突如、聖光城に鳴り響いた。私はレオットに一目置かせる絶好の機会だと思い、振り返りもせずに城外へと駆け出した。

平民区はめちゃくちゃに荒らされ、三メートルはあろうかという魔獣が暴れまわっていた。

「皆さん、早く逃げて!」

私は傷ついた平民たちの前に立ちはだかった。聖光術はまだ未熟だったが、躊躇なく障壁を展開する。

魔獣が咆哮を上げながら私に突進し、その巨大な爪が私の聖衣を引き裂いた。鮮血が瞬く間に衣を赤く染める。

私の魔力が尽きようとした、その時。金色の影が天から舞い降りた。

白馬に跨ったレオットだった。血塗れの私を見るなり、彼の顔に今まで見たことのない表情がよぎる。

「セイクリッド・ジャッジ!」

彼は一太刀で魔獣を切り伏せると、大股で私の方へ歩み寄ってきた。

「なぜこんなことをした? あなたの実力では、あの魔獣に勝てるはずがない!」

レオットはしゃがみ込み、私の傷を確かめる。その声はいつもより少し厳しかった。

あれ? もしかして、本気で怒ってる?

「だって、私は救世主ですもの……」

私は弱々しく微笑んだ。

「民を守るのは、当然のことでしょう?」

レオットはしばらく黙り込み、私の傷の治療を始めた。その手つきが、いつもより慎重であることに私は気づいた。

「無茶をしすぎです……」

彼の声が少し和らいだ。

「次にこのような状況に遭遇したら、支援が到着するまで待ちなさい」

「少なくとも……あなたを失望させてはいませんよね?」

私は彼の目を見つめた。

「……よくやりました。ですが、あなたの安全の方が重要です」

彼は私の視線を避けた。

ゲームのイベントシーンほどロマンチックではなかったけれど、彼が確かに私の身を案じ始めているのが感じられた。

その日から、レオットは時々私の体調を尋ねてくるようになった。

口調は依然としてよそよそしいものの、その気遣いは本物だった。

三年目の最後の夜。

神殿最上階の観星台で、予言石が再び微かな光を放った。

エリシアが来るという前触れだ。

三年の努力が十分だったのか分からず、私は少し緊張していた。

「明日、本当の救世主が降臨するのね」

私は自分からレオットの手を握り、彼の反応を探った。

彼の手が微かにこわばり、繋がれた手を見つめた。数秒ためらった後、そっと引き抜かれる。私の顔に、寂しさが一瞬よぎった。

「……ええ」

彼の声は、どこか複雑な響きを帯びていた。

「きっと楽しみにしているんでしょう? だって、その人こそがあなたが本当に待っていた人なのだから」

レオットは遠くの地平線に目を向け、わずかに眉をひそめた。

その表情は複雑で、言葉にし難いものだった。

「私は……」

彼は長く言葉を止め

「神官として、真の救世主の降臨を待ち望んでいるのは当然です。それが私の職責であり、世界の要請でもある」

「ですが、この三年は……」

彼はまた言葉を切り、私を見るその瞳に、私の知らない感情がかすめた。

「この三年が、どうかしたの?」

レオットは首を振り、再び星空へと視線を戻した。

「いえ、何も。明日には本当の救世主が到来し、すべてが軌道に乗るでしょう」

「この三年間、お世話になりました」

私はそっと言った。

「夏希……」

彼は初めて、私の名を呼んだ。

彼は振り返って私を見る。その顔には名残惜しさと、葛藤と、そして恐らくは彼自身にも説明できない何かが浮かんでいた……。

「あなたは……とても、特別な人だ」

彼は結局、そう一言だけ、とても小さな声で言った。

そして、自分が何を言ったかに気づいたように、慌てて付け加える。

「いえ、その、救世主の代役として、あなたはよくやり遂げた、という意味です」

「早くお休みなさい。明日は……」

彼は一瞬言葉を止め

「明日は、重要な一日になります」

彼は背を向けて立ち去った。その足取りはどこかためらいがちで、階段の入り口で一度だけ私を振り返った。

彼が塔の影に消えていくのを見つめながら、私の胸中は万感の思いが交錯していた。

夜空の中、予言石の光はますます明るさを増し、まるで闇を打ち破るかのように輝いていた。

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