第6章

病院を退院したその日、街全体が今夜の試合への熱狂に包まれていた。

病院の玄関から一歩足を踏み出すと、目の前の光景に私は言葉を失った。何百人もの報道陣とファンが病院の入り口を取り囲み、たった一つの答えを待っていたのだ。鈴木梨絵は、25歳の恋人を応援するために現れるのか、と。

「鈴木さん! 今夜の試合には行かれるんですか!」

「ネットでの年齢差についての論争にどうお答えになりますか!」

「28歳で、25歳の佐藤選手と本当に交際しているんですか!」

豪雨のように浴びせられるカメラのフラッシュに、目が眩みそうになる。どうしていいかわからずに立ち尽くしていると、黒いスーツの警備員チーム...

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