第12章

藤堂詩織の心臓がどきりと沈んだ。先ほどの義姉の真奈美との会話は、どうやら全てお祖父様に聞かれていたらしい。

林真奈美も、お祖父様がここにいるとは思ってもみなかったのか、顔からさっと血の気が引いていく。

彼女は慌てて笑みを浮かべ、早足でお祖父様の前に歩み寄ると、早口で説明した。「お祖父様、どうしてこちらに? 先ほどのは、詩織ちゃんと冗談を言っていただけですよ。どうか本気になさらないでください」

結城の御隠居様の視線が林真奈美に注がれる。その口調は平淡ながらも、有無を言わせぬ威厳を帯びていた。「冗談? 儂には微塵も冗談には聞こえなかったがな」

一拍置き、彼は藤堂詩織に視線を移すと、その眼差...

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