第5章
丸の内、森本法律事務所。四十二階にある重厚な会議室で、パートナー弁護士である高橋正臣氏が、私が提示した証拠の山を検分していた。
テーブルに広げられた音声ファイル、改竄された医療記録、そして株価操縦を示唆する内部文書。その一つ一つが、静かに、しかし雄弁に罪を告発している。
「天野さん、この証拠は……」
高橋弁護士の声は、百戦錬磨のプロらしい冷静さを保っていたが、その下に隠された衝撃を私は感じ取った。
「これは医療詐欺、金融商品取引法違反、そして悪質な婚姻詐欺。最低でも、三重の重罪容疑がかけられますね」
私は、冷ややかに微笑んだ。
「まだ足りませんか?」
「いえ、十分すぎま...
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