第7章
三ヶ月後。私はチューリッヒ湖を見下ろす新しいオフィスの、床から天井まである大きな窓の前に立っていた。朝日に輝くアルプスの峻厳な山々は、まるで新しい希望を象徴しているかのようだった。
「新橋にいた頃より、ずっと幸せそうな顔をしてるね、姉さん」
湯気の立つコーヒーカップを手に、千代が歩み寄りながら言った。
「この場所が、私がそもそもどうしてテクノロジーを愛するようになったのかを、思い出させてくれたの。人を傷つけるためじゃなく、助けるために」
カップを受け取ると、温もりが指先にじんわりと広がっていく。その時、オフィスの壁にかけられた大型テレビの画面が、NHKの臨時ニュースに切り替わっ...
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3. 第3章
4. 第4章

5. 第5章

6. 第6章

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