第119章

「若様、私……」ホステスは期待に満ちた笑顔で声を絞り出し、話し始めようとした。

その時、中村安が高橋駿の腕を軽く押し、二人は一斉に入口の方を見た。他の人たちも手を止めた。

田中権は佐藤桜に特別な印象を持っていた。彼女が美しく、魅力的な体を持っているだけでなく、若様の女性であり、彼女のせいで若様を怒らせかけたことがあったからだ。

「嫂!」高橋駿はわざと大きな声で叫び、振り返ると、いつもは女性に興味を示さない兄貴の膝にホステスが座っているのを見た。

よく見ると、兄貴の表情は冷淡で、全く動揺していない。むしろ、視線の端は嫂に向けられていた。

なるほど、嫂に見せるための芝居か!

桜は部屋...

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