第138章

男の呼吸が荒くなっていた。

桜は驚いた。彼が助けを求めてこなかったことに。

だが、そんなことを自分から言い出すわけにはいかない。

何も知らないふりをして、早く眠りにつこうと自分に言い聞かせた。どうせ彼はもう自分に手を出さないだろう。

女の呼吸は次第に穏やかで長くなっていった。

藤原司は腰を触り、また湿った液体が包帯から染み出しているのを感じた。

傷口が開いてしまったのだ。

彼はそっと起き上がり、薬箱を持ってバスルームに行き、鏡を見ながら自分で傷口を再び包帯で巻いた。

藤原司は鏡に映る自分を見つめ、唇が少し腫れているのを感じた。

彼は唇を触り、舌先で歯をなぞった。まだその甘さ...

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