第148章

藤原司は、この結婚の約束で押し付けられた妻に満足していなかったが、夫としての責任を果たし、彼女を守っていた。

記憶の中で、鈴木由美子と伊藤香以外に、初めて誰かがこんな風に彼女に接してくれた。

「奥様、若様に直接お礼を言いに行かれてはいかがでしょうか?」林田さんが提案した。

直接感謝する方が誠意が伝わるが、桜は急いでいなかった。ましてや、前回RK会社の本社に突撃して恥をかいたことを思い出し、首を振って断ろうとした。

田中彦は林田さんの意味深な視線を受け取り、口に出かけた「はい」という言葉を飲み込んだ。

「奥様、何にお礼を言うのか存じませんが、お礼を言うなら車にお乗りください」

「…...

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