第173章

桜はバスタオルを身にまとい、バスルームのドアを少しだけ開けて、慎重に尋ねた。

「若様、いらっしゃいますか?」

藤原司は胃が痛むのを感じ、指先に挟んだタバコでその痛みを麻痺させようとしていた。海外に出てからというもの、まともに食事を取っていなかったし、ここ数日は佐藤桜のせいでほとんど栄養ドリンクで過ごしていた。

声に反応して、彼はドアの隙間から覗く小さな顔を見た。濡れた瞳があちこちを見回し、やがて彼と目が合った。

「若様、バスルームに服がないんです」

藤原司はタバコを一口吸い、冷たい目元が煙に包まれた。桜の言葉を聞いても、まるで無視するかのように反応しなかった。

桜は頬を膨らませた...

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