第178章

桜は食事を届けた後、伊藤香の誘いに応じて、二人で商業地区のプライベートスイーツ店で会うことにした。

「香ちゃん、口の端が切れてる?」桜は伊藤香の唇を不思議そうに見つめた。

「え?」伊藤香は無意識に、あの日山口栖宸にキスされて切れた唇を触り、「ちょっと乾燥してただけ」と言った。

「そうなんだ」

「桜、海に落ちたって聞いたけど、大丈夫だった?」伊藤香はそのニュースを聞いたとき、驚いた。

「ちょっと水を飲んだだけで、大したことないよ」

「藤原司が助けに行ったって聞いたけど、少しは良心があるんだね」伊藤香は真剣な顔で言った。

実際には南条以勇が彼女を救ったのだ。桜は携帯を触りながら、南...

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